法規制

建設発生土の搬出先明確化義務【元請がやることを3段階で整理】

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建設発生土の搬出先明確化義務【元請がやることを3段階で整理】

を出したら終わり」は、制度上もう成立しない。

2021年7月の熱海市土石流災害を受けて、国は盛土規制法の制定と並行して、建設現場から出る土そのものの行き先を追跡させる仕組みを作った。根拠は廃棄物処理法ではなく資源有効利用促進法であり、義務を負うのは元請業者だ。

制度は一度に施行されたわけではなく、令和5年1月1日・令和5年5月26日・令和6年6月1日の3段階で積み上がっている。どの段階の話をしているのかが混ざると、現場では「結局なにをすればいいのか」が見えなくなる。この記事では国土交通省の公表資料をもとに、段階ごとに元請の実務を切り分けて整理する。


目次

  1. なぜ廃棄物処理法ではなく資源有効利用促進法なのか
  2. 第1段階(R5.1.1)計画制度の強化
  3. 第2段階(R5.5.26)搬出先の事前確認と受領書
  4. 第3段階(R6.6.1)最終搬出先までの確認
  5. 契約書・約款側でも変わったこと
  6. 元請の実務チェックリスト
  7. まとめ

1. なぜ廃棄物処理法ではなく資源有効利用促進法なのか

前提として、建設工事から出る土は法的に2つに分かれる。

区分 適用される法律
廃棄物・廃棄物混じり土を分別した後の廃棄物 廃棄物処理法に基づき適正に処理
建設発生土 資源有効利用促進法に基づき再生資源として利用

建設発生土は廃棄物ではないので、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の世界には入らない。代わりに資源有効利用促進法の計画制度が追跡の枠組みを担う。同法は、建設工事の受注者・発注者に再生資源の利用と建設副産物の再生資源化の努力義務を課し、主務大臣が判断基準(省令)を定めて、取組が著しく不十分な一定規模以上の事業者には立入検査・勧告・命令を行える建て付けになっている。

つまり、発生土の行き先管理は「廃棄物のトレーサビリティ」ではなく「資源利用計画の履行」として制度化されている。ここを取り違えると、社内でマニフェストを探しに行って空振りする。

建設発生土と廃棄物の線引きそのものは建設発生土と建設汚泥の違いで整理している。


2. 第1段階(R5.1.1)計画制度の強化

令和4年9月2日公布・令和5年1月1日施行の政省令改正が第1弾だ。施行日以降に契約する工事に適用される。

対象工事が広がった

再生資源利用促進計画(搬出側)と再生資源利用計画搬入側)の作成対象が引き下げられた。

計画の種類 対象 数量要件
再生資源利用促進計画(建設副産物搬出工事用) 建設発生土 500m³以上(1,000m³以上から拡大)
同上 コンクリート塊・アスファルトコンクリート塊・建設発生木材 合計200t以上
再生資源利用計画(建設資材搬入工事用) 土砂 500m³以上(1,000m³以上から拡大)
同上 砕石 500t以上
同上 加熱アスファルト混合物 200t以上

500m³は10tダンプでおよそ80〜90台の規模だ。中規模の造成や道路工事はほぼ対象に入る。1,000m³基準の感覚のままだと、対象外だと思い込んだまま計画未作成になる。

元請の義務が増えた

  • 計画の作成後速やかに、発注者に計画を提出し内容を説明する
  • 計画に変更が生じたときは速やかに計画を作成し、変更内容を発注者に報告する
  • 工事完了後速やかに実施状況を記録し、発注者から請求があったときは報告する
  • 計画を現場の見やすい場所に掲示する(デジタルサイネージによる掲示、インターネットによる公表に努める)
  • 計画およびその実施状況の記録を工事完成後5年間保存する(1年から延長)
  • 元請および下請企業は、契約に際し運搬費その他処理経費の適切な見積りに努める

監督対象も広がった

政令改正により、勧告・命令の対象事業者の基準が年間施工金額50億円以上から25億円以上に引き下げられた。中堅規模の建設会社も監督対象に入っている。

なお現場掲示については、国土交通省が参考様式に掲示様式を追加して公開しており、建設副産物情報交換システムCOBRIS)で入力した内容が掲示様式に自動転記される。計画書の実務は再生資源利用促進計画書の書き方にまとめた。


3. 第2段階(R5.5.26)搬出先の事前確認と受領書

盛土規制法の施行に合わせ、令和5年5月26日から第2弾の省令改正が施行された。同日以降に新たに契約する工事に適用される。ここから「行き先の適正性を確かめる」義務が入る。

事前確認と現場掲示

元請業者は、事前にその工事の搬出先が盛土規制法の許可地であるか等を確認し、結果を再生資源利用促進計画の添付資料(確認結果票)として現場に掲示する。

確認結果票には搬出先ごとに区分が記録される。国土交通省の様式例では、次のような分類が使われている。

確認結果 詳細欄の記載例
公共施設用地等 分類:道路/管理機関名:〇〇河川国道事務所
盛土許可等 盛土規制法第12条許可(許可番号)/第21条届出(届出日・自治体)
規制未指定 他法令許可等(採石法第33条の採取計画認可 等)、登録ストックヤード番号

受領書による確認

元請業者は搬出先に受領書の交付を求めて搬出先を確認し、受領書の写しを5年間保存する。伝票が返ってこない搬出先は、この時点で使えない。

土壌汚染対策法の手続確認

元請業者は発注者の土壌汚染対策法等の手続状況を確認し、確認結果を同様に現場掲示する。工事区域が区域指定地域に該当する場合は、所管の都道府県等へ汚染土壌の区域外搬出に関する確認が必要になり、その土は建設発生土ではなく汚染土としての取扱いになる。

土壌汚染との境界は重金属汚染土壌と発生土の違いで解説している。


4. 第3段階(R6.6.1)最終搬出先までの確認

第2弾省令のうち、最終搬出先までの確認義務だけは1年間の登録猶予期間を置いて令和6年6月1日から施行された。

搬出先からさらに別の搬出先へ土が動いた場合、元請業者は最終搬出先まで確認した書面を作成し、5年間保存しなければならない。中間に業者が挟まっても、追跡の責任は元請から離れない。

確認が不要になる3つの搬出先

ただし、搬出先が次のいずれかに該当する場合は、最終搬出先までの確認が不要になる。

  1. 国又は地方公共団体が管理する場所
  2. 他工事利用の場合であって当該建設工事の現場等
  3. ストックヤードのうち国土交通大臣の登録を受けた場所

この3つは実務上きわめて大きい。とくに②の他工事利用と③の登録ストックヤードは、元請が自分で選べる選択肢だ。非登録のストックヤードへ出すと、そこから先の行き先を自分で追いかけて書面化する義務が残る。

登録ストックヤードの仕組みは登録ストックヤード制度で詳しく扱う。工事間利用で出す場合の探し方は建設発生土の受け入れ先を探す方法を参照してほしい。


5. 契約書・約款側でも変わったこと

制度改正は契約書の書式にも及んでいる。中央建設業審議会が標準請負契約約款の改正を勧告した。

時期 改正内容
令和4年6月21日勧告 仕様書に建設発生土の搬出先の名称および所在地を定めるよう注記
令和4年9月2日勧告 再生資源利用促進計画を作成し発注者へ提出・説明することを注記

公共工事標準請負契約約款では、資源有効利用促進法により再生資源利用促進計画の作成を要する工事の場合、受注者は工事の施工前に発注者へ計画を提出して説明しなければならず、完成後に発注者から請求があったときは実施状況を報告しなければならない、と明記された。民間建設工事標準請負契約約款(甲)にも同趣旨が入っている。

発注者側も動いている。公共工事の入札および契約の適正化を図るための措置に関する指針(適正化指針)が令和4年5月20日に閣議決定で改正され、設計図書等で共有すべき情報の例示に建設発生土の搬出先に関する情報が、予定価格の設定にあたり適正な積算を行うべきものの例示に建設発生土等の運搬・処分等に要する費用が明記された。

なお国土交通省の資料によれば、発注段階で搬出先を指定する指定利用等の取組状況は、国99%、都道府県88%、政令市77%、市区町村(政令市除く)69%となっている(平成30年建設副産物実態調査結果・土量ベース)。国と都道府県はほぼ指定してくる前提で見たほうがいい。


6. 元請の実務チェックリスト

契約から完成までの流れで整理する。

契約前

  • 搬出土量が500m³以上か。該当するなら再生資源利用促進計画の作成対象
  • 仕様書に搬出先の名称・所在地が定められているか。定められていないなら発注者と協議する
  • 運搬費・処理経費を適切に見積もっているか(下請との契約でも同様)

着工前

  • 再生資源利用促進計画を作成し、発注者に提出して内容を説明したか
  • 搬出先が盛土規制法の許可地等であることを確認し、確認結果票を作成したか
  • 発注者の土壌汚染対策法等の手続状況を確認したか
  • 計画と確認結果票を現場の見やすい場所に掲示したか

搬出時

  • 搬出先から受領書の交付を受けているか
  • 搬出先が「国・地方公共団体の管理地」「他工事の現場」「登録ストックヤード」以外なら、最終搬出先まで確認して書面化したか

完成後

  • 実施状況を記録したか。発注者から請求があれば報告できる状態か
  • 計画・実施状況・受領書の写し・最終搬出先の確認書面を5年間保存する体制があるか

計画に変更が出たときの再作成・再報告を忘れやすい。搬出先の追加・変更は必ず計画側に戻す。


7. まとめ

  • 建設発生土の行き先管理は廃棄物処理法ではなく資源有効利用促進法の計画制度。義務を負うのは元請業者
  • R5.1.1: 計画作成対象が土砂1,000m³→500m³、保存期間1年→5年発注者への説明現場掲示が義務化。勧告命令の対象も年間施工金額50億円→25億円へ拡大
  • R5.5.26: 搬出先が盛土規制法の許可地等かの事前確認受領書による確認と写しの5年保存、土壌汚染対策法の手続確認が義務化
  • R6.6.1: 最終搬出先までの確認が義務化。ただし国・地方公共団体の管理地、他工事利用、登録ストックヤードへの搬出は確認不要
  • 標準請負契約約款も改正され、仕様書への搬出先明記と発注者への計画提出・説明が注記された

制度の狙いは、行き先の分からない土をなくすことだ。裏返せば、行き先が事前に決まっている土は制度上いちばん扱いやすい。搬出先を早期に確定させる段取りが、そのまま書類負担の軽減になる。

ツチオクは建設発生土・残土のマッチングプラットフォームとして、排出側の土質・数量・時期と受入側の条件を突き合わせる場を提供している。搬出先が着工前に決まっていれば、確認結果票も受領書の段取りも前倒しできる。搬出先を探す具体的な進め方は残土の引き取り先を見つける方法にまとめている。