法令・規制

重金属汚染土壌と発生土の違い|土壌汚染対策法の境界線

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重金属汚染土壌と発生土の違い|土壌汚染対策法の境界線

建設工事の掘削現場で「汚染かもしれない土が出た」という状況は、都市部の再開発や工場跡地の開発で珍しくない。このとき、出てきた土が「建設発生土」として扱えるのか、「汚染土壌」として特別な処理が必要なのかを正しく判断できるかどうかで、処理コストと法令リスクが大きく変わる。

本記事では、重金属汚染土壌と建設発生土の法令上の定義の違い、現場での判断フロー、誤処理した場合のリスクを解説する。


目次

  1. 建設発生土の法令上の定義
  2. 重金属汚染土壌とは何か
  3. 土壌汚染対策法が定める第1〜第3種特定有害物質
  4. 現場での区分判断フロー
  5. 汚染土壌を発生土として処理した場合のリスク
  6. 汚染懸念地での調査義務
  7. まとめ

1. 建設発生土の法令上の定義

建設発生土は、建設工事に伴って搬出される土砂、岩石、砂利などの総称だ。廃棄物処理法の「廃棄物」ではなく、再利用可能な資材として位置付けられている。

国土交通省が定める「建設発生土等の有効利用に関するガイドライン」では、発生土を以下の5区分で分類している。

区分 特徴
第1種発生土 礫質土・砂質土。盛土材として最も利用しやすい
第2種発生土 細粒分混じり砂質土
第3種発生土 通常の粘性土・砂質土
第4種発生土 高含水比粘性土など改良が必要なもの
泥土 浚渫土砂など

この区分はあくまで物理的な性質による分類であり、汚染の有無は別の基準で判断される


2. 重金属汚染土壌とは何か

土壌汚染対策法(2002年制定、直近改正2019年)では、特定有害物質を含む土壌について調査・措置義務を規定している。

「汚染土壌」と判断されるのは、土壌汚染対策法第2条が定める特定有害物質による汚染が基準値を超えた土壌だ。この土壌は廃棄物処理法上の廃棄物とは別の扱いになるが、汚染土壌処理業者でなければ処理できない(同法第16条)。

建設発生土として流通・再利用できるのは、特定有害物質による汚染が溶出量基準・含有量基準の双方を満たしている土壌のみだ。


3. 土壌汚染対策法が定める第1〜第3種特定有害物質

土壌汚染対策法が規制する特定有害物質は25種類あり、3つのカテゴリに分類される。

第1種特定有害物質(揮発性有機化合物) クロロエチレン(塩化ビニルモノマー)、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トリクロロエチレンなど12物質。主に工場跡地、ガソリンスタンド跡地で検出される。

溶出量基準の例:ベンゼン 0.01mg/L以下、トリクロロエチレン 0.03mg/L以下

第2種特定有害物質(重金属等) カドミウム、六価クロム、シアン、水銀、セレン、鉛、砒素、フッ素、ホウ素の9物質。工場跡地・鉱山跡地・農地転用地で問題になりやすい。

溶出量基準の例:鉛 0.01mg/L以下、砒素 0.01mg/L以下、カドミウム 0.003mg/L以下

第3種特定有害物質(農薬等) PCB、有機リン化合物、チウラム、シマジン、チオベンカルブなど4物質。農地転用や旧工場跡地で検出される場合がある。

重金属汚染土壌として最も現場で問題になるのは第2種、特に鉛・砒素・六価クロムだ。旧工場跡地の都市再開発では、地下数メートルの汚染層が工事中に露出するケースがある。


4. 現場での区分判断フロー

掘削現場で汚染懸念土壌が出た場合の判断フローは以下の通りだ。

ステップ1: 汚染懸念の有無を確認する 土地利用履歴(登記・旧地図・ヒアリング)から、工場・ガソリンスタンド・農薬倉庫等の使用履歴がないかを確認する。都市部の旧商工業地域では、正確な使用履歴が追えないケースも多い。

ステップ2: 土壌汚染対策法上の調査義務の有無を判断する 以下のいずれかに該当する場合、法第3〜5条の調査義務が発生する。

  • 3,000m²以上の形質変更を伴う工事
  • 有害物質使用特定施設廃止後の土地
  • 自主調査により汚染が判明した土地

ステップ3: 調査結果に基づいて処理ルートを決定する

  • 基準値以下 → 建設発生土として搬出・再利用可能
  • 基準値超過 → 汚染土壌として届出・指定処理業者へ委託

5. 汚染土壌を発生土として処理した場合のリスク

汚染土壌を建設発生土と偽って処分した場合、複数の法令に抵触する可能性がある。

土壌汚染対策法違反 汚染土壌を不適切に搬出した場合、法第16条違反(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。

廃棄物処理法違反 汚染土壌が廃棄物と判断された場合、不法投棄として法第16条違反(5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)。

民事責任 受入先の土地が二次汚染を受けた場合、不法行為(民法709条)として損害賠償請求を受けるリスク。

2022年以降、全国で汚染土壌の不適切搬出事案が相次いで摘発されており、「知らなかった」という主張が通りにくくなっている。特に元請は、下請業者が汚染土壌を不適切に処理した場合も管理責任を問われる場合がある。


6. 汚染懸念地での調査義務と費用感

工場跡地や旧ガソリンスタンド跡地での開発では、事前の土壌調査が不可欠だ。

フェーズ1調査(文献・現地調査) 土地利用履歴の文献調査と現地ヒアリング。費用の目安:20〜50万円。汚染懸念があるかどうかを判定する。

フェーズ2調査(土壌・地下水のサンプリング分析) 実際に土壌をボーリングして採取・分析する。費用の目安:100〜500万円(調査範囲による)。

汚染土壌の処理費用 汚染の種類・量・濃度によって大きく異なる。重金属汚染土壌の場合、掘削除去+処理費で1m³あたり5,000〜50,000円以上になる事例もある。

汚染懸念がない土地での建設発生土の処分費用(1m³あたり数百〜数千円)と比較すると、汚染土壌の処理コストは桁違いに高い。事前調査への投資が結果的に総コストを下げることが多い。


まとめ

重金属汚染土壌と建設発生土の違いは、土壌汚染対策法が定める特定有害物質の基準値(溶出量基準・含有量基準)を超えているかどうかで決まる。

現場での判断で重要なのは3点だ。

  1. 土地利用履歴から汚染懸念の有無を事前に確認する
  2. 3,000m²以上の形質変更工事では法的調査義務の要否を確認する
  3. 汚染が確認された場合は必ず指定処理業者に委託する

建設発生土として処分できる土砂は、汚染の懸念がないか、調査で基準値以下が確認されたものに限られる。この境界線を正確に把握することが、法令リスクと処理コストの両方を管理する出発点になる。



免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言の代替となるものではありません。建設発生土の処理に関する法令対応については、最新の法令・行政通知を確認の上、弁護士・専門家または所管官庁(国土交通省・都道府県建設担当部局等)にご相談ください。