公共工事における発生土再利用の事例集|国交省指針に沿った運用
公共工事における発生土再利用の事例集|国交省指針に沿った運用
公共工事から発生する建設発生土の量は膨大だ。国土交通省の資料によると、建設工事から発生する建設発生土は年間約3億m³(2022年度)に上る。このうち公共工事由来の発生土は全体の約40%を占め、再利用率の向上は建設コスト削減・環境負荷低減の両面で重要な課題となっている。
本記事では、国土交通省の「建設発生土利用技術マニュアル」に基づく指針と、道路・河川・造成工事での具体的な再利用事例を解説する。
目次
- 公共工事における建設発生土の再利用の現状
- 国交省指針が定める再利用の優先順位
- 工種別の再利用事例
- 再利用を促進するための情報共有の仕組み
- 愛知県内の取り組み事例
- 民間工事でも活用できる再利用の考え方
- まとめ
1. 公共工事における建設発生土の再利用の現状
2022年度の国土交通省データによると、建設発生土の再利用率(現場内利用+現場外への有効利用)は約80%に達している。ただし残り約20%(約6,000万m³)は最終処分(埋立・廃棄)されており、処分コストと環境負荷が課題として残っている。
再利用が進まない理由として以下が挙げられる。
- 発生土と受け入れ先の情報が共有されていない
- 土質・数量が工事計画時に不確定
- 搬出タイミングと受け入れタイミングが合わない
- 再利用するより処分場に捨てるほうがコスト的に楽(短期的視点)
国土交通省はこの課題に対応するため「建設発生土等の取扱いに関するガイドライン」を策定し、発注者(国・地方公共団体)と施工者の両方に情報共有と再利用計画策定を求めている。
2. 国交省指針が定める再利用の優先順位
国土交通省「建設発生土利用技術マニュアル」では、建設発生土の利用について以下の優先順位を定めている。
| 優先順位 | 利用方法 | 内容 |
|---|---|---|
| 1位 | 工事内利用 | 同一工事敷地内での盛土・埋め戻しへの活用 |
| 2位 | 他工事への搬出利用 | 同一発注者・同一地域の他工事への供給 |
| 3位 | 公共工事から民間工事への提供 | 情報交換システムを通じた提供 |
| 4位 | 受け入れ地への搬出(民間処分場等) | 1〜3位で利用しきれない土の最終対応 |
この優先順位に従い、発注者は工事計画段階から発生土の量・質・搬出時期を把握し、他工事との土量バランスを調整することが求められている。
3. 工種別の再利用事例
道路工事での再利用
道路工事は切土(掘削)と盛土(埋め立て)が同一工区内で発生することが多い。道路縦断計画の設計段階で「土工バランス」を確認し、切土で発生した土を同一路線の盛土に流用する「工事内利用」が基本だ。
事例: 愛知県内の国道改良工事(区間約3km)では、切土発生土約15,000m³のうち11,000m³を同一工事内の盛土材として活用。残り4,000m³は隣接する県道工事に提供し、全量を現場外処分なしで利用した。
河川工事での再利用
河川工事では、浚渫土(しゅんせつ土)・河床掘削土が大量に発生する。質が良い砂礫は路床材・盛土材として活用できるが、有機物含量が高い場合は再利用が難しく、農地改良材・緑化材への利用が検討される。
事例: 愛知県木曽川水系の護岸工事で発生した砂礫土約8,000m³を、同県の農地整備事業に提供。農家の客土材として活用され、発注者側の処分コストゼロを実現した。
造成工事・宅地開発での再利用
大規模宅地開発工事では、敷地全体で切土・盛土のバランスを計画段階から設計する「土工計画」が行われる。土工計画を適切に立てることで、外部への搬出土量を最小化し、処分コストを削減できる。
事例: 名古屋市郊外の宅地造成工事(面積約5ha)では、土工計画の最適化により当初見込みの搬出量15,000m³を6,000m³に削減。処分コストを約1,800万円削減した。
4. 再利用を促進するための情報共有の仕組み
国土交通省は、建設発生土の再利用を促進するための情報共有システム「建設発生土等情報交換システム」の整備を進めてきた。このシステムにより、発生土の排出予定工事と受け入れ可能工事の情報を照合し、マッチングを支援する。
現在、地方整備局ごとにシステムの運用状況は異なるが、中部地方整備局管内(愛知・静岡・岐阜等)でも公共工事の土量情報共有が進んでいる。
民間工事では公共の情報共有システムを利用できないが、ツチオク(/sell)のような民間マッチングプラットフォームが同様の機能を提供している。公共工事で余った発生土を民間の受入先に提供したり、公共工事の盛土材を民間発生土から調達したりするケースも増えている。
5. 愛知県内の取り組み事例
愛知県では建設発生土の適正処理・再利用を促進するため、以下の取り組みが行われている。
愛知県建設発生土等情報交換システム 愛知県が運営する県内公共工事の発生土情報を共有するシステム。公共工事同士のマッチングを支援している。登録件数は年間数十件程度で、大規模工事を中心に活用されている。
名古屋市の取り組み 名古屋市都市整備局は、市内の公共工事で発生した良質土を積極的に市内の他工事に提供する仕組みを整備している。特に名古屋都心部の地下工事(地下鉄・共同溝等)から発生する砂礫土は品質が高く、宅地造成業者からの受け入れ需要が多い。
三河地域の農地整備連携 豊橋市・豊川市周辺では、農地整備事業(客土・暗渠工事等)と建設工事の発生土マッチングが行われており、農家への客土材提供と建設会社の処分費削減が同時に実現している。
6. 民間工事でも活用できる再利用の考え方
公共工事での再利用促進の考え方は、民間工事にも応用できる。
設計段階での土工バランス確認 民間開発工事(マンション建設・工場建設等)でも、設計段階で敷地内の切土・盛土バランスを確認し、外部搬出量を最小化する設計を目指す。
発生土の事前品質確認と情報開示 搬出土の土質・土量・搬出時期を事前に文書化し、受入先に提供することで、マッチング成立までの期間を短縮できる。
複数工事の土量バランス調整 複数の現場を抱えるゼネコン・デベロッパーでは、自社複数現場間での土量バランス調整(A現場の発生土をB現場の盛土材に使う)が処分費削減に有効だ。
→ 残土の搬出先を探す・受け入れ先を探す(/sell) → 対応エリア一覧を確認する(/area)
まとめ
公共工事での建設発生土再利用は年間約80%の再利用率に達しているが、残り20%の処分土量削減が課題だ。国交省の指針では工事内利用→他工事への供給→民間工事への提供の順で再利用を優先することを求めている。
愛知県内では道路工事・河川工事・宅地造成工事での工事内利用や農地整備との連携が事例として蓄積されており、設計段階からの土工バランス計画と情報共有が再利用率向上の鍵となっている。民間工事でもマッチングプラットフォームを活用することで、公共工事と同様の効果が期待できる。
→ 建設発生土の盛土材としての活用 → 建設発生土の処分費用の相場