建設発生土のCO2排出量と環境配慮|運搬距離が及ぼす影響
建設発生土のCO2排出量と環境配慮|運搬距離が及ぼす影響
建設業は日本の産業別CO2排出量において製造業・輸送業に次ぐ大きな排出源だ。その中でも、建設発生土の運搬に使われるダンプトラックのCO2排出は無視できない規模になっている。
建設会社のCO2削減取り組みでは「省エネ機械の導入」が注目されがちだが、「発生土の搬出距離を短縮する」という方法は、コスト削減と環境配慮を同時に達成できる現実的な手段だ。本記事では、建設発生土の運搬に伴うCO2排出量を数値で整理し、距離短縮による削減効果を解説する。
目次
- 建設発生土の運搬がCO2排出に与える影響
- ダンプトラックのCO2排出量の計算方法
- 搬出距離別のCO2排出量比較
- 近距離マッチングによるCO2削減効果の試算
- 建設会社のCO2削減報告に活用する方法
- まとめ
1. 建設発生土の運搬がCO2排出に与える影響
国土交通省「建設工事施工統計調査」によると、建設発生土の発生量は年間約3億m³だ。このすべてをダンプで運搬した場合、10tダンプ換算で年間約3,750万台分の運搬が発生する計算になる。
実際には現場内利用・近距離活用も多いが、年間数千万台規模のダンプ運搬が建設発生土処理のために行われていることは確かだ。
建設業界では2030年度までに2013年度比でCO2排出量46%削減という政府目標がある(建設業振興基金「建設業脱炭素ロードマップ」)。発生土の搬出距離短縮は、大型機械の電動化と並んで現実的なCO2削減手段として注目されている。
2. ダンプトラックのCO2排出量の計算方法
燃費とCO2排出係数
10tダンプトラック(ディーゼル)の燃費は走行条件によって異なるが、実態値として以下が目安だ。
| 走行条件 | 燃費(L/km)の目安 |
|---|---|
| 高速道路(積載時) | 2.0〜2.5L/km |
| 一般道(積載時) | 2.5〜3.5L/km |
| 一般道(空車) | 1.8〜2.5L/km |
軽油のCO2排出係数は2.619kgCO2/L(国土交通省エコドライブ・温暖化対策テキストより)。
CO2排出量の計算式
CO2排出量(kg)= 走行距離(km)× 燃費(L/km)× 排出係数(2.619 kgCO2/L)
10tダンプ・片道10km(一般道)の1回あたりCO2排出量
- 往路(積載): 10km × 3.0L/km × 2.619 = 78.6kg CO2
- 復路(空車): 10km × 2.2L/km × 2.619 = 57.6kg CO2
- 1往復合計: 約136kg CO2
3. 搬出距離別のCO2排出量比較
1台あたり・1往復のCO2排出量(10tダンプ・一般道)
| 片道距離 | 1往復のCO2排出量(kg) |
|---|---|
| 5km | 68kg |
| 10km | 136kg |
| 20km | 272kg |
| 30km | 408kg |
| 50km | 680kg |
発生土500m³の全量搬出に伴うCO2排出量(10tダンプ8m³積み・約62台)
| 片道距離 | 全量搬出のCO2排出量 |
|---|---|
| 5km | 4,216kg(4.2t-CO2) |
| 10km | 8,432kg(8.4t-CO2) |
| 20km | 16,864kg(16.9t-CO2) |
| 30km | 25,296kg(25.3t-CO2) |
| 50km | 42,160kg(42.2t-CO2) |
同じ500m³の発生土を搬出する場合、搬出先を50km圏から10km圏に変えると、CO2排出量を約33.7t-CO2削減できる計算だ。
4. 近距離マッチングによるCO2削減効果の試算
事例: 名古屋市内の工事(3,000m³・片道30km→10kmに短縮)
片道30kmの処分場に搬出した場合
- 1往復CO2: 408kg × 375台(3,000m³÷8m³)=153,000kg=153t-CO2
片道10kmの造成工事に搬出した場合(マッチング活用)
- 1往復CO2: 136kg × 375台=51,000kg=51t-CO2
削減効果: 102t-CO2削減(67%削減)
同時に運搬費も削減できる。
- 30km搬出: 42,000円/台 × 375台=15,750,000円
- 10km搬出: 24,000円/台 × 375台=9,000,000円
- コスト削減: 6,750,000円(43%削減)
CO2削減と費用削減が同時に実現する典型例だ。
5. 建設会社のCO2削減報告に活用する方法
建設会社のサステナビリティ報告書・グリーン調達の要求に対応するため、発生土搬出に伴うCO2排出量を定量的に把握・報告することが求められるようになっている。
Scope3排出量への組み込み
発生土の運搬はサプライチェーン排出量(Scope3)の「輸送・配送(上流)」に該当する。GHGプロトコルに基づくScope3報告に発生土運搬のCO2を含める場合は、以下の情報を記録する。
- 発生土量(m³)
- 使用ダンプの種類と積載量
- 搬出先までの距離
- 往復走行距離合計
建設会社がアピールできる取り組み
近距離マッチングによるCO2削減を取り組み事例として社内・対外的に報告できる。例えば「マッチングプラットフォーム活用により、発生土搬出距離を平均25km短縮し、年間CO2排出量を○t削減した」という形で定量化できる。
ツチオク(/sell)を活用することで、近距離受入先を優先的に探すことができ、CO2削減と費用削減を同時に達成しやすくなる。
まとめ
建設発生土の運搬は10tダンプ1往復あたり片道10kmで約136kgのCO2を排出する。搬出距離を50kmから10kmに短縮すると、同量の発生土搬出でCO2排出量を80%削減できる計算だ。
近距離マッチングは最もシンプルで効果的なCO2削減策であり、コスト削減とも両立する。発生土の搬出先を決める際に「距離」を意識的に考慮し、近距離受入先を優先することが、建設会社のCO2削減目標達成に直結する実務的な取り組みとなる。
→ 近距離の残土受入先を探す(/sell) → 残土の長距離運搬を避ける方法