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残土搬出記録がSDGs報告書の数字になる|建設業者の実務的なSDGs対応

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残土搬出記録がSDGs報告書の数字になる|建設業者の実務的なSDGs対応

「SDGsに取り組んでいますか」と発注者に聞かれて、何を答えるか迷ったことはないか。

建設業にとって最も説明しやすいSDGs実績の一つは、建設発生土の近距離再利用だ。残土を遠くの処分場に運ぶのではなく、近隣の造成現場・農地整備に搬出することで、CO2削減量と処分費削減額が具体的な数字として出る。その数字が、来年の報告書に載る。

本記事では、名古屋エリアの建設業者が残土搬出の実務から始められるSDGs対応の手順を、抽象論なしで解説する。


目次

  1. 残土処分はなぜSDGsに直結するのか
  2. 近距離マッチングが生む2つの数字
  3. 報告書に使える指標の計算方法
  4. 発注者への説明の組み立て方
  5. ESG調達要件への対応
  6. よくある誤解:SDGsは大企業だけの話か
  7. まとめ:記録を残すことが全ての出発点

1. 残土処分はなぜSDGsに直結するのか

建設発生土は廃棄物処理法の「廃棄物」に当たらない。だから処分場に持ち込むだけでは「廃棄物を減らした」という話にはならない。では何が評価されるのか。

評価されるのは「どこに・どう使われたか」だ。

  • 採石場から新しく砂を買わずに済んだか(天然資源の節約)
  • 遠くの処分場に持ち込まずに近隣で再利用したか(輸送CO2の削減)
  • 処分場の埋立容量を無駄に使わなかったか(インフラの延命)

この3点がSDGs目標12(つくる責任つかう責任)・目標13(気候変動対策)の具体的な実践に相当する。「環境に配慮しています」という言葉より、「何m³を近隣再利用し、CO2を何t削減した」という数字の方が発注者に伝わる。


2. 近距離マッチングが生む2つの数字

建設発生土の近距離マッチングは、2つの数字を同時に生む。

数字1: CO2削減量

10tダンプ1台が片道1km走るとCO2を約1.4kg排出する(一般道走行・積載時の目安)。

搬出距離を30kmから10kmに短縮した場合の削減量試算(発生土500m³・62台相当):

条件 往復走行距離 CO2排出量(目安)
片道30km 60km×62台=3,720km 約5,200kg(5.2t-CO2)
片道10km 20km×62台=1,240km 約1,736kg(1.7t-CO2)
削減分 約3.5t-CO2

※CO2排出量は10tダンプ一般道走行の試算値。実際の削減量は車種・道路条件・積載率により異なります。

500m³の現場1件で、距離短縮だけで約3〜4t-CO2の削減効果が見込める。年間10現場を施工するなら30〜40t-CO2が報告書に載る数字として積み上がる。

数字2: 処分費削減額

搬出距離が20km縮まると、10tダンプ1台あたりの運搬費は1万円前後下がる目安だ。500m³(62台)なら60〜70万円程度の差になる。この削減額も、社内コスト管理とSDGs報告の両方で使える。


3. 報告書に使える指標の計算方法

SDGs・ESG報告書を求める発注者が知りたいのは、以下の5項目だ。

指標 記録方法
総発生土量(m³) 施工図書の掘削数量から算出
近距離再利用量(m³) 搬出先ごとに集計
処分場搬入量(m³) 総発生量-再利用量
有効活用率(%) 近距離再利用量÷総発生土量×100
CO2削減量(t-CO2) 搬出距離の差×台数×排出係数で試算

CO2削減量の計算式(参考)

削減CO2(kg)= 短縮距離(km)× 往復2 × ダンプ台数 × 排出係数(約0.14kg/km・10tダンプの目安)

この式で出た数字を使って「○年度、弊社は発生土の搬出距離短縮により○t-CO2の削減を実現した」と報告書に書ける。

ツチオクで取引した案件は、プラットフォーム上に搬出先・搬出量・日付の記録が残る。この記録を計算式に当てはめれば、ほぼ自動的に指標が出る。


4. 発注者への説明の組み立て方

大手ゼネコン・デベロッパーが下請業者に求めるSDGs報告は、年々具体的になっている。「取り組んでいます」では通らず、「どの工事で・何m³を・どこに搬出し・CO2を何t削減したか」という数字を求めてくる発注者も出てきた。

説明に使う3要素を整理する。

要素1: 現状の可視化 「本工事では発生土が○m³発生します。従来ルート(片道○km)では1m³あたりCO2が約○kg排出されます。」

要素2: 取組内容 「近距離マッチング(ツチオク活用)により、○m³(全体の○%)を片道○km圏内の造成現場・農地整備に搬出します。」

要素3: 効果の定量化 「処分費削減額:○万円、推定CO2削減:○t-CO2、処分場搬入削減:○m³」

この3要素が揃えば、発注者側のESG担当者が自社のScope3報告書に転記できる形になる。


5. ESG調達要件への対応

中堅〜大手の発注者がサプライチェーンに求めるESG要件は、以下のような内容になってきている。

  • 建設廃棄物・発生土の処分場搬入量の削減計画
  • 再生材・発生土の有効活用率(目標値と実績値)
  • 不法投棄ゼロの証明(搬出先の証跡書類)
  • Scope3を含むCO2排出量の計算・報告

このうち、ツチオクを使った搬出で直接対応できるのは「有効活用率の向上」「搬出証跡の確保」「CO2削減実績の計算根拠」の3点だ。

搬出記録がデジタルで残ることで、発注者への書類提出の工数が大幅に下がる。紙の納品書を探してコピーする手間が、プラットフォーム上のデータ出力で済む。


6. よくある誤解:SDGsは大企業だけの話か

「SDGsは大企業が報告書に書くための話で、中小の建設業には関係ない」という見方がある。しかし実態は変わりつつある。

下請への要件波及 名古屋エリアでも、大手ゼネコンや大手デベロッパーの下請として入る工事では、年次の環境報告資料の提出を求められるケースが出てきた。元請が発注者(施主)に提出する報告書の中に、下請各社のCO2削減実績を盛り込む形だ。

入札要件への組み込み 一部の公共工事入札では、ISO14001認証またはそれに相当する環境管理実績を加点要件とするケースがある。発生土の有効活用記録は、この「環境管理実績」の具体的な証拠として使える。

金融機関の評価 脱炭素融資・グリーンローンを扱う金融機関が、建設業の中小企業に対しても環境実績の開示を求め始めている。発生土のCO2削減記録は、融資審査での説明材料になりうる。

いずれも「来年から始めればいい」という話ではない。記録は積み重ねるものだ。今年の1現場から始めることで、3年後には「年間○t-CO2削減・○%有効活用率」という実績値が積み上がる。


まとめ:記録を残すことが全ての出発点

SDGs対応は大がかりな取り組みから始める必要はない。

残土の搬出先を近場に変える。その記録を残す。それだけで、CO2削減量と処分費削減額という2つの数字が手に入る。この数字が報告書に載り、発注者への説明に使え、来年の自社の実績として積み上がる。

まず1現場の搬出記録を取り、計算式に当てはめてみることが、御社のSDGs対応の実質的な第一歩になる。